サーモバリアの仕組みと導入判断|反射で“何度”下がるのかの考え方
工場や倉庫の暑さ対策として注目されているのが遮熱シートの「サーモバリア」です。アルミの反射性能を活かし、屋根からの輻射熱を遮ることで建物内部の温度上昇を防ぎます。
ただし疑問も多数あるのではないでしょうか。たとえば「反射で何度下がるのか?」「断熱材とはどう違うのか?」「すべての建物に効果があるのか?」などです。
とくに導入を検討する現場では、単なる体感的な涼しさでは物足りないでしょう。理論と実測の両面から効果を判断できる情報が必要です。
そこで今回のお役立ちコラムでは、サーモバリアの仕組み・反射原理・反射率データ・施工条件・不適合ケースなどをくわしくお話しします。サーモバリアがどのように遮熱性能を発揮するのか?どのような建物で最も効果を発揮するか理解できるでしょう。
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サーモバリアは「輻射熱を抑える反射型遮熱材」
サーモバリアは断熱材では防げない輻射熱を高反射率のアルミ層で跳ね返して、建物内部に熱が侵入するのを防ぎます。一般的な断熱材は「熱を通しにくくする」仕組みです。ある程度熱を吸収してからゆっくり伝えるのに対し、サーモバリアは「そもそも吸収させない」という性能を備えています。
太陽光の赤外線により熱せられた屋根は60度以上になることも多々あります。輻射熱が建物内部に侵入すれば、内部の温度上昇は避けられません。
サーモバリアは輻射熱を反射させることで、建物内部の温度上昇を食い止められるのです。ただ、暑さだけの対策ではなく、夏場の空調負荷も軽くなるのがメリットです。工場や倉庫のほか、体育館など天井高のある建物でも効果が期待できます。「熱の侵入を止める最後の砦」としてサーモバリアは大きな対策となるのです。
室内の体感温度を下げ、作業環境を快適化
工場や倉庫の屋根裏にサーモバリアを施工すると、輻射熱を反射して空間全体の温度ムラを減らせます。作業者の体感温度を下げるだけでなく、空調効率の向上・電力消費の抑制も期待できるのです。とくに大型の施設では、冷房の風量設定を下げられるため、運転負荷や設備寿命の延長といった副次的なメリットも期待できます。
屋根の劣化を防ぎ、建物寿命を延ばす
屋根表面の温度上昇が抑えられるため、金属屋根やスレート屋根の熱膨張・収縮の繰り返しによる劣化を防ぐ効果が期待できるでしょう。これにより、屋根材やシーリング材の寿命を延ばし、メンテナンス周期を10〜15年単位に延長できる可能性もあります。
また、屋根の下の湿度上昇も抑えられるため、鉄骨やボルト部のサビ発生リスクを軽減できます。
サーモバリアの構造・性能・実測データ
ここではサーモバリアの構造や性能や実測データについてくわしくお話しします。
多層構造による輻射遮断メカニズム
サーモバリア表面は、純度99%のアルミ反射層+ポリエチレン樹脂層+接着層の多層構造となっています。反射層で輻射熱を遮断し、内部の樹脂層が伝導熱を吸収・緩衝する仕組みです。
実測に基づく温度低減データ
静岡大学との共同実験では、屋根裏温度について最大9℃の低下という実験結果が出ました。また、屋根下の暖気塊温度では約4℃の低下です。
断熱性能の評価については、グラスウール断熱材75mm相当の断熱効果を示しました。熱抵抗値は1.34m²K/W相当です。この実験結果からわかることは「サーモバリアが建築物の省エネルギー化に大きく貢献できる」点でしょう。また、従来の断熱材では防ぎきれない輻射熱を効果的にカットできる点は大きなメリットと言えます。以下は実験の詳細です。
- 倉庫1(サーモバリアなし)
- 倉庫2(サーモバリアあり)
- ※縦1820mm×横1820mm×高さ1817mmの同型建物2棟
- 実施期間は1週間、連続測定を実施(168時間)
- 実験の条件は晴天時・屋外での実証
- 測定方法はT型熱電対を使った温度測定
耐久性と安全性
サーモバリアは、天候・温度変化・施工技術に影響されにくい構造を目指して開発されました。基本的に作業者の技量や作業時天候に左右されず、均一な遮熱効果を発揮できるのがメリットです。耐久性確保のための「施工品質依存性の抑制」を重視して設計されています。
また、接着に使う両面テープには「保持力・水密性が高く、使用温度–10℃~90℃」です。屋外での耐候性を確保する材料仕様が採用されているのも、耐久性の高い理由となっています。
また、サーモバリアスカイ工法は、ライフテックの特許工法です。日本では「飛び火認定」を取得しており、危険物倉庫の屋根にも施工できます。そのほか、タイやベトナムでも国際特許を取得している工法です。
参照:サーモバリアの有無による室内温度の違い(温度計測結果の報告書)静岡大学工学部中山顕
参照:PRTIMES静岡大学と株式会社ライフテックが共同で実証実験を実施。遮熱材「サーモバリア」の施工で最大9℃の室温低下、屋根下の暖気塊温度4℃低下、電気料金最大27%削減を確認。
反射性能を保つための注意点
サーモバリアの使用温度は-10℃〜90℃を想定仕様範囲としています。接着温度帯の記載があります。この仕様範囲を超える極端な寒冷・高温環境や、日射・冷却が急激に変動する環境だと要注意です。
貼付材料や反射層間の熱収縮・膨張ストレスが発生するリスクもあります。反射層の微細な亀裂発生や接合部劣化の進行が早まる可能性もあるのです。また、湿度変動が激しい地域や沿岸部では、塩分・結露などの影響も考慮したほうがいいでしょう。
施工環境と施工精度の影響
遮熱塗装の場合、塗料を塗布する手法のため職人の技術力に依存します。たとえば、塗りムラや塗膜の剥がれといった施工誤差が施工不良につながるリスクがあったのです。塗りムラや塗膜の剥がれのような施工不良があると、遮熱性能に大きなばらつきが発生します。
一方サーモバリアはシート貼付方式です。遮熱層を均一に貼り付けて、表面全体で安定した反射効果を維持できます。基本的に、貼り付ける施工のため、職人による技術差が発生しにくいというメリットもあります。
ただし、まったく技術力が不要なわけでもありません。
- 貼り付け時に空気層を残さないよう、ローラーなどで圧着処理を行う
- 角部や重ね代部分を丁寧に貼り込み、隙間をつくらない
- 繋ぎ目のズレや曲面の浮きを防ぐため、事前に寸法を正確に測定する
- 下地表面の油分・ホコリ・サビを除去し、密着性を確保する
このような点で問題があれば、十分な性能を発揮しない可能性もあります。施工管理を徹底することで、サーモバリアの反射層が長期間安定して機能し、初期の反射率(約97%)を維持したまま、劣化を防げるのです。
導入判断のための条件と注意点
サーモバリアは高い遮熱効果を持ちますが「どんな建物でも効果が出る」というわけではありません。
構造や用途によっては効果が限定的になるため、以下の条件確認が必要です。
適した建物・条件
サーモバリアが最も効果を発揮するのは、金属製の屋根を持つ大空間構造物です。折板屋根やスレート屋根などは日射による熱吸収が大きく、屋根裏温度が上がりやすいため、アルミ反射材の効果が顕著に現れます。
また、屋根裏に人が入って施工できるスペースが確保されている建物なら、施工が容易で均一な仕上がりも得られるのです。とくに冷房負荷の高い工場や倉庫のほか体育館などでは、天井面からの輻射熱を抑えることで体感温度が下がり、作業環境の改善につながります。
注意が必要な建物・条件
一方で、すべての建物がサーモバリアに適しているわけではありません。すでに厚い断熱材が施工されている建物では反射層による熱遮断効果が十分に発揮されにくいため、コスト対効果が低下する可能性もあります。また、換気が不十分な屋根裏や高湿度環境では内部に結露が発生しやすいため、反射層の酸化や接着面の劣化を招くリスクがあるのです。
このように、サーモバリアは屋根構造・施工空間・発熱条件などを正しく見極めることで、最も高い効果を引き出せます。導入前には現地調査を行い、反射材・断熱材・通気構造のバランスを総合的に判断することが重要です。
【FAQ】サーモバリアの実効性に関する質問
Q1:本当に“97%反射”できるのですか?
A.ライフテックのデータでは、赤外線波長域(0.78〜2.5μm)で平均97%反射を確認。ただし現場ではホコリや湿度の影響を受けるため、実効値は90〜95%程度が現実的です。
Q2:既存の断熱材と一緒に使っても問題ない?
A.併用可能です。断熱材の外側に設置することで内部の蓄熱を防ぎ、断熱材の劣化も抑制できます。断熱材が分厚い場合は屋根裏換気を確保し、熱こもりを防ぐ設計がいいでしょう。
Q3:剥離や劣化のリスクは?
A.アルミ層の酸化が進みにくいため、20年以上性能を保つ例があります。ただし施工時に空気が残ると膨れの原因になるため、ローラー圧着が重要です。
Q4:雨漏りや結露の原因になる?
A.適切な通気を確保できているなら問題ありません。サーモバリア自体に防湿性があるため、結露はほとんど発生しませんが、
屋根裏の湿気が多い建物では換気口や透湿シートを併用するとより安全です。
サーモバリアの導入判断は「中山建装」にご相談ください!反射率97%の実力を最適設計で活かします
サーモバリアは、断熱材では防げない輻射熱を高反射アルミ層で跳ね返す反射型遮熱材です。静岡大学の実証実験では、屋根裏温度最大9℃・室内温度約4℃の低下を確認。さらに、グラスウール75mm相当の断熱効果(熱抵抗値1.34m²K/W)を示し、省エネ効果と空調効率の向上が科学的に立証されています。
ただし、すべての建物に万能というわけではありません。効果が高いのは金属屋根やスレート屋根の工場・倉庫・体育館などの大空間構造で、屋根裏に施工スペースが確保できる建物です。一方で、厚い断熱材が既に入っている建物や換気が不十分な構造では、コスト対効果が低下する場合もあります。だからこそ、導入前に現地調査を行い、反射材・断熱材・通気構造の最適バランスを検証することが重要です。
倉庫工場の塗装、雨漏り補修専門店(株)中山建装では、サーモバリアをはじめとした各種遮熱・断熱工法に精通し、屋根構造や稼働条件に応じた最適な施工プランをご提案します。現地調査の結果をもとに、温度シミュレーション・ROI(投資回収率)分析・工期見積りまでワンストップで対応可能です。
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