塗装に関するマメ知識やイベントなど最新情報をお届けします! 現場ブログ

遮熱×断熱の二重化は得か?結露・蒸れリスクと最適構成

メンテナンス基礎知識 2025.10.16 (Thu) 更新

遮熱×断熱の二重化は得か?結露・蒸れリスクと最適構成

工場や倉庫の屋根改修で「遮熱材と断熱材を併用すれば、より効果的では?」と考える方は多いでしょう。

遮熱は太陽光の赤外線を反射して熱を入れない、断熱は熱伝導を抑えて熱を伝えない仕組みです。理論上は理想的な組み合わせに見えます。

ただし実際の現場では併用することで内部結露や蒸れが発生し、断熱材の性能が低下したり、金属屋根が腐食したりするリスクもあるのです。

「遮熱×断熱を併用すると何が起こるのか?」この点を理解しないと、遮熱と断熱の組み合わせによる施工で失敗しかねません。そこで今回のお役立ちコラムでは、遮熱と断熱を併用についてくわしくお話しします。

▼合わせて読みたい▼
工場長向け|遮熱“シートor塗装or断熱”徹底比較(費用・効果・工期)

お問い合わせはコチラから

遮熱と断熱の併用は正しく設計すれば有効

遮熱と断熱の併用は正しく設計すれば有効

遮熱材と断熱材は、目的が似ているようで「熱の扱い方」が異なります。遮熱材は赤外線反射による放射熱の遮断、断熱材は熱伝導率の低下による蓄熱防止を目的とします。そのため両者を無計画に重ねると、通気層を失った閉鎖構造となり、湿気がこもって結露を誘発する結果になりかねないのです。

正しい併用設計

以下は併用における適切な方法の代表例です。

  • 遮熱材を外側(屋根裏側)
  • 断熱材を室内側
  • その間に通気層(空気の逃げ道)

このような構成なら、熱と湿気の逃げ場を確保しながら効率的に温度を下げられます。遮熱と断熱を併用する際は「重ねる」のではなく「分離して機能させる」のが基本なのです。

結露・蒸れが起こる仕組みを理解する

遮熱と断熱について不適切な併用をすると、結露が発生しやすくなります。結露は空気中の水蒸気が「露点温度(飽和水蒸気量に達する温度)」に達したとき、表面や内部で水滴として発生する現象です。遮熱塗料でも遮熱シートでも、太陽光や放射熱を強力に反射できたとしても、通気がないと湿気は屋根裏に閉じ込められます。

昼間は問題なくても、夜間に気温が下がって温度が急低下すると結露が発生するのです。このような現象を「内部結露」と呼び、外からは見えないため発見が遅れやすく厄介なトラブルと言えます。

内部結露が起こる科学的メカニズム

内部結露のメカニズムについて、よりくわしくお話しします。塗料やシートも含めた断熱材を室内側、遮熱材を外気側に配置したとします。屋根や外壁が赤外線を吸収して放射熱を発生しても、基本的には遮熱材が反射するのです。そのため屋根内部へ熱伝導が抑えられるため問題はありません。ただ、「遮熱による温度遮断」が同時に、屋根裏の冷却化につながる場合があるのです。

昼間、太陽光を反射した屋根裏は高温になりにくくなりますが、夜間になると放射冷却が起こり、金属屋根の表面温度が急激に低下します。

その結果、内部の空気層が露点温度に達して、遮熱シートの裏面や断熱材表面に微細な水滴が生じさせます。このような原因で「内部結露」が発生するわけです。

内部結露による水分は、目に見えないほど微量だとしても、吸湿性のある断熱材(グラスウール・ロックウールなど)に吸収されやすい性質を持ちます。

水分を含んだ断熱材は熱伝導率が上がるため、断熱性能が30〜50%低下してしまいます。さらに乾燥しきれないまま日中に再加熱されると、繊維内部で膨張・収縮を繰り返し、最終的に形状が変化するのです。たとえば垂れ下がりや密着不良のようなトラブルが引き起こされます。また、建物の躯体が腐朽することで、構造耐力を低下させる原因になるのです。建物の寿命は低下しますから、倒壊の危険性さえ出てきます。

建物に通気層のない構造だと、この結露水が逃げ場を失うため、屋根裏や断熱層の中で慢性的な湿潤状態が発生するのです。「隠れた水分蓄積」と呼ばれており、見た目には問題がなくても、内部では劣化が進行してしまいます。

参照:令和5年度 国土交通省補助事業〈改正〉平成28年省エネルギー基準対応 住宅の省エネルギー 4~7地域版 設計と施工 2023

遮熱と断熱の併用による結露リスクを防ぐ3つの設計条件

遮熱と断熱の併用による結露リスクを防ぐ3つの設計条件

遮熱と断熱を同時に導入する際は「層構成」「通気」「露点管理」という3つの要素を正しく設計することで、結露や蒸れのリスクを大幅に減らせます。

この3要素は互いに連動し、どれか一つを欠くだけで全体性能が崩れるものです。以下でくわしくお話しします。

層構成の原則:外側に遮熱、内側に断熱

基本的な考え方は「外側で熱を反射し、内側で温度を保つ」ことです。外部側にサーモバリアのような遮熱シートを設けることで、放射熱を反射させて建物内部への熱侵入を大幅に抑えます。

その内側にグラスウールやロックウールのような断熱材を配置すれば、温度差を緩やかにできて、結露の発生点を建物外部側へと押し出せます。

逆に、断熱材を外側へ配置すると問題です。屋根や外壁の金属板と断熱層の間に熱の逃げ場がなくなるため、内部温度差が急激に拡大します。

この状態では、露点が断熱材内部に入り込み、わずかな湿気でも水滴化して内部結露を誘発しかねません。また、断熱材が濡れることで熱伝導率が上昇し、断熱性能が低下します。

基本的に遮熱と断熱の「層の順番」は、単なる施工上の選択ではありません。露点をコントロールするための構造設計そのものと考えたほうがいいでしょう。

通気層の確保

遮熱材と断熱材の間には通気層を確保することが推奨されます。この通気層による空間が「空気の流れる緩衝帯」となって、熱と湿気の両方を外部に逃がす役割を果たすのです。また、通気層には3つの機能があります。

1つ目は湿気の逃げ道をつくる機能です。断熱材に入り込んだ水蒸気を自然換気で排出し、湿潤状態を防止します。2つ目は温度ムラの抑制です。外気との通気によって日中と夜間の温度差を和らげて、結露が発生しにくい環境を保ちます。3つ目は熱橋(ヒートブリッジ)の分断です。鉄骨など熱を通しやすい構造部材がある場合、通気層が緩衝帯となって熱の伝達を抑えます。

通気が確保されていない構造だと夏場は熱がこもりやすく、冬場は内部の水蒸気が滞留して結露の温床になるのです。とくに金属屋根は熱伝導が早く、通気層がないと一晩で露点に達するケースもあります。軒先や棟換気のような換気孔を組み合わせて、空気の流路を連続させたほうがいいでしょう。

露点管理と防湿層の設計

通気層が湿気を外へ逃がす一方、内部から湿気を入れない工夫が「防湿層」です。室内では多くの湿気が発生します。たとえば人の呼吸もそうですし、機械熱や調理や洗浄などが理由です。放っておくと断熱層内に拡散して、温度が下がる部分で水滴化します。

この現象を防ぐためには、室内側、断熱材の内側に防湿シートの施工が必要です。外気側に貼ってしまうと湿気が抜けずに、逆に内部結露を悪化させる結果になりかねません。

また、工場や倉庫など湿度の高い現場では、透湿抵抗値が10⁸(10の8乗)以上の防湿フィルムを選定することで安全性が高まります。

同時に、棟換気口や軒天換気口を設けて「入る湿気<出る湿気」となる換気バランスを確保することが重要です。

参照:国土交通省国土地理院 第 XⅢ章 木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案

お問い合わせはコチラから

FAQ:遮熱×断熱併用に関するよくある質問

FAQ:遮熱×断熱併用に関するよくある質問

Q1:遮熱と断熱を重ねると必ず結露するのか?

A.通気層と防湿設計を適切に行えば、むしろ温度差を和らげて結露リスクを下げられます。

遮熱材だけ、または断熱材だけの構成では、温度差が大きくなりやすく、結露点が断熱材内部に到達しやすくなるのです。ただ、外側に遮熱材、内側に断熱材を配置してその間に適切な通気層を設けて湿気を逃がせば、結露が発生しにくい安定構造になります。

Q2:通気層を確保できない場合の対策は?

A.通気層が取れない構造では、以下のような代替的対応が考えられます。

透湿性遮熱材を使う:通気が取れない間でも、湿気が通過しやすい素材を選んで湿気を閉じ込めない

断熱材を硬質発泡系にする:硬質ウレタンやフェノールフォームなど、吸湿しにくく、水分をほとんど含まない素材にすることで、湿気の影響を抑える。

部分的通気経路を設ける:全面通気が難しい場合でも、局所的に通気孔や小さな換気経路を設けて湿気を逃がす

ただし、このような方法は通気層を十分に確保する構成ほどの安全性は持ちません。設計時に慎重な湿度・露点シミュレーションが必要です。

Q3:屋根裏に換気口(通気孔)は必要か?

A.必要です。棟換気(屋根頂部の排気孔)や軒先換気(屋根の入り口部の吸気孔)を設けて空気を循環させることが、湿気の滞留や内部結露を防ぐ基本手法です。

ただし、入口と出口で断面積のバランスをとること、虫や小動物の侵入対策、換気口には防水性能の確保が求められます。

Q4:防湿シートはどこに貼るべきか?

A.防湿シートは、基本的に湿度が高い室内側に施工します。外側に貼ると、湿気を断熱層や遮熱層側に閉じ込め、逆に結露を促進するリスクが出てくるのです。

また、防湿シートには透湿抵抗値が大きいものを使用し、シートの継ぎ目をしっかり気密処理することも求められます。

お問い合わせはコチラから

遮熱×断熱の最適構成は「中山建装」にご相談ください|結露を防ぎつつ最大の省エネ効果を実現

遮熱×断熱の最適構成は「中山建装」にご相談ください|結露を防ぎつつ最大の省エネ効果を実現

遮熱と断熱の併用は、正しく設計すれば非常に効果的な省エネ手法です。遮熱材は赤外線を反射して外部からの熱侵入を防ぎ、断熱材は内部の温度を保ちます。しかし、通気層の欠如や層構成の誤りがあると、屋根裏に湿気がこもって結露を誘発し、断熱材の劣化や金属屋根の腐食につながるリスクがあります。とくに工場や倉庫では、機械熱や湿度の影響を受けやすいため、「外側に遮熱材」「内側に断熱材」「間に通気層」という基本構成が欠かせません。

倉庫工場の塗装、雨漏り補修専門店(株)中山建装では、遮熱と断熱の併用工事において、現地の気候条件・屋根構造・湿度環境を詳細に分析した上で、露点管理・通気設計・防湿層の位置設計を組み合わせた最適プランをご提案します。必要に応じて棟換気・軒先換気・透湿フィルム選定までトータルに対応し、結露や蒸れを防ぎながら、冷暖房効率を最大化できる施工を行っています。

遮熱×断熱を「二重の効果」で正しく機能させたい方は、中山建装にご相談ください。お問い合わせフォームからのご依頼、メール・電話でのご相談、またはショールームでの構造モデル体験も承っております。建物の寿命を延ばし、電力コスト削減と快適性を両立する遮熱・断熱構成を、確かな技術でご提案します。

お電話の方はこちらからお気軽にご相談下さい!オペレーター

ご相談お見積診断無料です!

0120-316-225電話受付時間 9:00~19:00(年中無休定休)

ご相談・お見積りメールフォームはこちらから

倉庫工場の遮熱断熱で省エネ、環境改善できた事例ダウンロード資料はこちらから

倉庫工場の塗装、雨漏り補修専門店中山建装 施工エリア

神奈川県厚木市 地域密着で倉庫・工場をはじめとする外壁塗装・屋根塗装・雨漏り補修工事を承っております。