工場・倉庫の片流れ屋根は本当に得か?導入前に知るべき利点とリスク
工場や倉庫の屋根形状は、単なる建築デザインの違いにとどまりません。屋根の選択は「建設コスト」「維持管理費」「設備稼働率」「従業員の作業環境」に直結するため、経営判断として非常に重要な要素です。中でも片流れ屋根は、そのシンプルな構造によって施工費用を抑えやすく、太陽光パネルの設置効率にも優れるため、法人施設において採用が増えています。
一方で、雨樋への過度な負担や外壁劣化の早期化、雨漏りリスクなど、対策を怠れば思わぬ修繕コストや生産停止リスクを招く点も無視できません。特に工場や物流倉庫では、雨漏りによる機械設備の損傷や在庫商品の破損が発生すれば、直接的な損害だけでなく納期遅延や取引先からの信用低下にもつながり、経営への影響は甚大です。
今回のお役立ちコラムでは、片流れ屋根の導入を検討する法人向けに、その利点とリスクを経営的視点から整理し、さらに長期的に安心して運用するための雨漏り対策やメンテナンス戦略について詳しく解説します。新築計画や改修工事を検討中の企業様にとって、経営判断の一助となる内容をお届けします。
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片流れ屋根の最大のメリットは施工費用の安さ
片流れ屋根とは、屋根が一方向にのみ傾斜しているものを指します。山折り型の屋根(切妻屋根)や、2枚の台形と三角を組み合わせた屋根(寄棟屋根)と比べると構造がシンプルなため、比較的施工が簡単なのでコストパフォーマンスの面で優れていると言えるでしょう。
そのため一般の戸建てだけでなく、工場で採用されることも多く人気があります。
太陽光パネルを設置するのにも向いている
片流れ屋根は1面あたりの屋根の面積が広いため、太陽光パネルの設置に向いています。南向きに傾斜させれば、太陽光を取り込みやすく、多くの電力を確保できるでしょう。工場や倉庫の建設時に太陽光パネルを導入したい場合はもちろん、ゆくゆくは導入する可能性が高い場合にも、片流れ屋根は最適な選択肢の1つと言えます。
屋根裏を活用しやすい
片流れ屋根を採用した工場や倉庫の屋根裏は、とても広いため様々な用途で活用できます。屋根裏を収納スペースにするのもよいし、太陽光発電の蓄電池や空調設備、換気設備を配置するのもよいでしょう。
屋根裏を簡易的なオフィスや休憩室、着替え部屋などに改装し、工場内の作業エリアをできるだけ広く使いたい場合にも向いています。
片流れ屋根のデメリット・リスクと対策
片流れ屋根にはデメリットも存在します。対策も含めて解説しますので、導入前に把握しておくとよいでしょう。
雨樋への負担が大きい
片流れ屋根は一方方向に雨水が流れ落ちるため、雨樋への負荷が大きくなります。設置方法はもちろんのこと、雨樋の排水能力も高いものを導入した方がよいでしょう。大雨や台風が発生した場合に、雨樋から水があふれてしまう状況が続くと、雨漏りや腐食の原因となります。
屋根や外壁が劣化しやすい
片流れ屋根を採用する場合、軒先のない壁面は雨風や紫外線の影響を受けやすいため、劣化しやすくなります。耐久性の高い外壁材や外壁塗装をおこない、雨風や紫外線対策をおこなった方がよいでしょう。
雨漏りのリスクが高い
片流れ屋根は他の屋根タイプと比べて雨漏りのリスクが高いといわれています。片流れ屋根は根の勾配方向に水が長距離を流れるため、途中の継ぎ目・釘穴・板金の合わせ目から侵入しやすいでしょう。
また、高い側の外壁と屋根の接合部(立ち上がり)に水が溜まりやすい点、風を受けやすい面と背面がはっきりしているため、強風を伴う雨で屋根材の隙間から水が押し込まれやすい点も雨漏り発生のリスクに繋がります。
強風対策や隙間部分への補強、風が吹き込みにくいような構造や防風・暴雨カバーを付けるなど、あらかじめ対策をした方が安心です。
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未然に防ぐ!工場・倉庫の雨漏り対策
前述の「片流れ屋根のデメリット」で紹介した内容の多くは、雨漏りの発生に繋がります。雨漏りを未然に防ぐ方法も詳しく解説しますので、ぜひご検討ください。
年に2回程度、定期点検をおこなう
工場・倉庫の雨漏り対策で最も有効なのは定期点検です。(屋根や外壁は厳しい環境下にさらされているため、片流れ屋根でなくとも、定期点検は重要になります。)
劣化や破損が発生したとしても、定期点検で早めに修理や補強をおこなえば、メンテナンスのコストを抑えられ、工場・倉庫の寿命も長くなるでしょう。
定期点検の頻度は工場・倉庫の環境や状態にもよりますが、年に2回ほどおこなえば安心です。定期点検の頻度や時期については、定期点検を依頼する業者に相談しながら決めるとよいでしょう。
大型台風の後なども点検をおこなう
定期点検とは別に、大型台風の後なども点検をおこなっておくと安心です。たとえば屋根材の一部が剥がれていたり、雨樋が破損していたりしても、早急に発見できれば、部分的な修理で済むでしょう。
ただし、台風発生後は屋根メンテナンス業者を装った訪問販売の詐欺が多発するため、訪問販売の業者には注意してください。できれば信頼できる業者を自ら探し、直接依頼することをオススメします。
点検の記録を管理し、状況を把握する
定期点検の報告書は定期点検直後に確認するだけでなく、ファイリングなどをして管理し、状況を把握しやすい環境にしておくとよいでしょう。過去の点検の流れから、今後の修繕計画や劣化スピードを把握しておけば、安心です。
雨樋を排水機能に優れたものに交換する
雨樋から水があふれ出るようなら、早い段階で排水機能に優れた雨樋への変更を検討した方がよいでしょう。基本的には雨樋の桶の容量が大きければ大きいほど、許容できる雨の量も多く、排水機能の面で優れています。
多くの雨を受け止める場合、設置面の強度も重要になるため、業者と相談しながらがっちりと固定した方がよいでしょう。
片割れ屋根・外壁の塗装メンテナンスでは高耐久な塗料を選ぶ
片割れ屋根を採用する場合は、屋根や外壁が紫外線や雨風の影響を受けやすいため、塗装メンテナンスをおこなう場合は、高耐久で長持ちする塗料を選ぶとよいでしょう。
フッ素塗料
フッ素塗料は一般的な塗料(シリコン塗料やウレタン塗料)よりも耐久性が高く、長持ちするため、工場や倉庫だけでなく、公共施設の塗装メンテナンスにも採用されることの多い塗料です。
防汚性の面でもとても優れており、倉庫・工場の美観を維持しやすく、汚れによる劣化の対策にも向いています。
無機塗料
無機成分を含む無機塗料は、とても耐久性に優れており、ある程度の防火性も備えています。とにかく長持ちする塗料なので、片割れ屋根の塗装に向いています。
超低汚染塗料(アステックペイント)
塗料メーカーであるアステックペイント社の超低汚染塗料は、緻密で強靭な塗膜を作るため、とても丈夫で汚れにも強い塗料です。一般的な塗料と比べるとかなり長持ちするため、塗装メンテナンスの頻度も減らせるでしょう。
遮熱性の面でも優れているため、太陽熱の対策や夏場の工場内の熱中症対策にも向いています。
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工場・倉庫の片流れ屋根にオススメの屋根材
工場・倉庫の片流れ屋根にオススメの屋根材をいくつか紹介します。これから工場・倉庫を建造する場合はもちろん、屋根の大幅な改修をおこないたい場合は参考にしてみてください。
ガルバリウム鋼板
・金属屋根の中でも軽い
・耐食性に優れる(サビ対策)
・金属屋根の中でも耐用年数が長い
ガルバリウム鋼板は近年採用率の高い屋根材の1つです。金属屋根の中でも軽く、耐震性の面で優れており、耐食性にも優れるためサビ対策にもなります。定期的に塗装メンテナンスをほどこせば、30年程度は屋根の機能を保ち続けられるでしょう。
ジンカリウム鋼板
・ガルバリウム鋼板と同じ組成
・石粒をコーティングしたものが多い
ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板は組成的には同じものですが、日本国内では石粒でコーティングしたものが多く流通しています。石粒でコーティングすることにより塗装メンテナンスの頻度を減らせるのがポイントです。
スレート(コロニアル)
・コストが安い
・軽量で耐震性に優れる
スレートはガルバリウム鋼板などと比べると耐用年数は短いですが、初期費用が安く軽量で耐震性の面でも優れています。耐用年数は15年~20年程度なので、塗装でメンテナンスするというよりは、張り替えによるメンテナンスが向いています。
中山建装に相談!工場・倉庫の片流れ屋根を安心運用するために
片流れ屋根は施工費用を抑えられるうえ、太陽光パネル設置や屋根裏活用といった経営面でのメリットも大きいため、工場や倉庫で多く採用されています。ただし、雨樋への負荷増大や外壁の早期劣化、雨漏りリスクなど、適切な対策を怠ると生産設備や在庫への被害につながり、企業にとって大きな損失要因となりかねません。
倉庫工場の塗装、雨漏り補修専門店(株)中山建装では、法人施設の特性に応じた定期点検、排水機能強化、高耐久塗料の提案などを通じて、片流れ屋根を長期的に安定運用できる体制を整えています。新築計画時の屋根材選定から改修・防水補強、太陽光パネル導入を見据えた施工まで一貫対応が可能です。
工場・倉庫の資産価値を守り、突発的な修繕コストを抑えるためにも、まずは専門業者である中山建装へご相談ください。
お問い合わせはフォーム、メール、お電話、またはショールームにて承っております。